良き縁につき随う

人の心には、もともと、善も悪もない。善悪は縁によって発る。
良き縁に会えば善くなり、悪しき縁に近づけば悪くなる。
もともと自分の心が悪いのだと思うな。
ただ善き縁につき随うべきである。

(正法眼蔵随聞記の一文から一部省略)

正法眼蔵は曹洞宗の開祖道元の主著ですが、正法眼蔵随聞記はその弟子懐奘が、師匠の言動を書き留めたメモをまとめたものです。懐奘は道元の二歳年上で、最初の出会いは中国帰りの道元に論戦を挑むというものだったのですが、結果、道元に心酔し弟子入りしています。元は平安貴族の九条家出身で、比叡山で天台教学を修め、学僧として将来を嘱望されていたのですが、母親の勧めもあり衆生済度の実践の為に下山、法然の弟子証空から浄土教を学ぶも、得心せず禅の道に進んでいます。道元の跡を継ぎ永平寺の第二世となり、その発展の礎を築きました。

経営コンサルタントの大前研一が、自分を変えるのに「決意を新たにする」ことほど無意味なことはないと本で書いてます。大学にいると、心を入れかえ、決意を新たにする学生に、日々接するのですが、それで本当に変わる学生は彼が言うように非常に稀です。無意味とまでは言いませんが、なかなか難しい。ではどうすれば良いのか?

彼は次の三つを実践するように勧めています。

1.時間配分を変える
2.住む場所を変える
3.つきあう人を変える

これらはいずれも、人間の生活や暮らし、あるいは人間の思考といったものさえも、他者との関係性の中で作られていくという観察の結果なのだと思います。
我々はこれを、古くから「縁」として理解し、良き縁に巡り会うために、場所を変え、時間を変え、善き人に出会うことを大切にしてきました。

夏は自分を見つめ、新しいことにチャレンジする良い機会です。心を新たにするだけではなく、一歩踏み出されては如何かと思います。
皆様によいご縁がありますように。

合掌 副住職