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葬儀の後の食事を精進落としと言ったりします。


葬儀の後、四十九日の忌中は肉気のものは食べず、精進潔斎に務めるのが本来ので伝統ですが、特に精進してもいないのに、葬儀の食事を「精進落とし」というのはふさわしくありません。「精進明け」や「精進上げ」とも言いますが、落としといわれると「精進」はなにか面倒で悪いもののような扱いです。〇〇落としというのは、「汚れ落とし」や「サビ落とし」、「メイク落とし」のようにこびりついた悪いものを綺麗にするイメージです。精進は本来、仏道修行にひたすら励む積極的な姿勢を指す言葉なので、落とさなければならないようなものではありません。むしろ常に身につけておくべきものです。

一方神道では、精進を物忌みと同じように使う場合があります。何か大事な行事、清浄な空間や時間に臨むとき、肉食や匂いの強い野菜を避け、外出なども控えるようにするのを物忌みといいますが、神聖なものを穢さないようにする配慮であると同時に、自分が穢れるのを防ぐ為の防御といった意味もあったようです。

そう考えると、葬儀後の忌中に自分が穢れないように、また穢れを伝染させないように精進するというのは筋が通ります。そのための食事が精進料理であるわけです。それでも落とすというイメージとは結びつきません。落とすとすればそれは忌中にこびりついてしまった穢れであって、その「祓い」のイメージと精進を混同してしまったのではないかと思います。

本音ベースで考えると、味気ない精進料理から肉気たっぷりの美味しい日常生活に戻るというウキウキ感は理解できます。それでもやはり「落とす」というのは不適切で、わざわざ特別な名前を付けたいのであれば「 精進明け」がもっとも本来の意味に近いように思うのです。