『病室で念仏を唱えないでください』に思うこと

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
龍蔵寺の見習い生活も2ヶ月が過ぎました。
少しでも皆様のお役に立てるよう精進していく所存ですので、皆様のご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。


テレビを見ていますと、気になるドラマの宣伝をやっていました。『病室で念仏を唱えないでください』という医療系ドラマです。既に放送されている番組ですので、ご存じの方も多いかと思います。やはりタイトルが気になりますので、原作の漫画を先に読んでみました。ざっくりいうと、僧侶でもある救急医の主人公が、患者の様々な悩みに向き合いながら成長する医療系ドラマのようです。


タイトルにある「念仏」とは、そもそもは心の中で仏や仏の世界を思い浮かべる仏道修行のひとつです。正確には「観想念仏」といい、今私たちがなんとなく思い浮かべる「南無阿弥陀仏と口で唱える」念仏とは少し違います。こちらを「称名念仏」といいます。古い仏教では、深い瞑想、精神集中が求められる観想念仏の方が、称名念仏より優れた、上等な修行と考えられていましたが、誰でもができる、誰もが阿弥陀様の救済に浴せる修行法として称名念仏を高く評価したのが、浄土宗を開かれた法然上人です。


この漫画のタイトルの通り、一般的に病院ではお坊さんは歓迎されません。お坊さんにまつわる葬式、死のイメージが不吉なものとされているようです。この物語でも、患者さんもそのようなイメージで「病室に僧侶がいるとは何事か」と怒ったり困惑したりするわけですが、そこで強引に仏教の教えを説こうする主人公と対立しドラマが生まれるわけです。作中、主人公が仏教の教えにこだわるあまり、患者の気持ちに寄り添えないシーンが登場します。仏教の教えが必ずしもすべての人に受け入れられるわけではありません。悲しみや苦しみが目を曇らせ真理を見えなくしてしまうわけですが、少しずつそれらを乗り越え、一生懸命に生きていこうとする姿がとても感動的です。漫画の主人公は僧侶ですが、物語の主役は患者なのです。患者の方に抱く強い共感こそが、この漫画の魅力なのではないかと思います。ドラマでは主人公を演じる伊藤英明さんの美坊主姿に注目しがちですが、患者の目線に立って「自分が同じ境遇だったら・・・」と考えてみると、ドラマもより一層楽しめるのではないでしょうか。


見習い  合掌