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面白いデザインのトートバッグを見つけました。デフォルメされた可愛らしいお釈迦さんの涅槃図です。「良いでしょう~」と寺務員さんに見せたところ「ちょっと変じゃないですか?」と指摘されました。涅槃図としては違和感があるというのです。一般的な涅槃図のお釈迦さんは「頭北面西右脇臥」とされています。頭は北向きで顔は西向き、右脇を下にして横に寝そべっている姿です。亡くなった方の頭を北向きにする「北枕」もこれに由来します。このイラストのお釈迦さんは左腕を下にしていますし、顔の向きを西側とすると頭は南向きになってしまいます。確かに一般的な涅槃図からは外れているわけです。とはいえ、お昼寝のイラストかもしれませんし、そもそも仏教専門ではないお店で買ったので、多少の間違いは仕方ありません。


仏様の方角の話でいうと、浄土宗の阿弥陀様は西方極楽浄土にお住まいなので、そちらからやってこられるという体裁でお顔は東を向いているのが定番です。龍蔵寺の本堂も西側に本尊を奉安し、東側が正面となっています。しかし常に正面を東向きに建てられるはずもなく、場所や儀式によっては西向きであったり北向きにしたりと、約束事を守れないこともよくあります。そういうときは、「以信転方」といって、阿弥陀様の仏像や掛け軸等を奉安している方角を西とみなし、それを基準に北枕なども合わせます。大切なのは「信」の方であって、方角を守るといった形式的なことではないとしているわけです。


仏教以外の宗教においても、方角は重視されています。例えばイスラム教では必ずメッカの方角に向かって礼拝をしますし、キリスト教の教会は浄土宗とは逆で、正面を西向きに建てられます。「以信転方」もイスラム教徒から見ればいい加減に思えるかもしれませんが、私は「良い加減」だと思います。冒頭の涅槃図も、涅槃だと思えば間違いかもしれませんが、お昼寝だと思えばそうでもありません。「方角はあっているのか」とか形式張るのではなく、大切なのは自分が信ずる心です。


このところ檀信徒の方から、こうしても良いでしょうか、これは間違いではないでしょうか、と聞かれることが多くなりました。気にして頂けるということは、そこに程度の差はあるでしょうが「信」があるわけで、大切にして頂きたいと思います。私たちにも、ぜひ気軽に聞いて頂ければと思います。教義に関わるものであれば、こうしてください、こうするものです、とお答えするのですが、人間が慣習として作りだしたものについては、今の我々の生活に支障が無いようにと、臨機応変に答えるようにしています。細かい作法や慣習に囚われず、ただ信仰を持って手を合わせる姿こそが、本来の仏教の姿なのではないでしょうか。


合掌 見習い