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先日ご報告しましたように、修理のため工房に出張されていたご本尊様がお戻りになりました。
どこかでご報告の会を開こうと計画しております。請うご期待です。

龍蔵寺のご本尊様の阿弥陀如来像は親鸞聖人の33回忌にあたる1293年に造立されました。龍蔵寺の創建が1355年ですので、その62年前になります。龍蔵寺よりも御像の方が古い。

この間、阿弥陀様がどこにおられたのか、どのようにこのお寺にたどりついたのかは、よく分かっていません。

今回の修理では新発見もありました。
この阿弥陀様は、元は一本の木を一度バラバラにして、それを組み合わせて作る寄せ木造り、割矧造で作られています。今回はそのすべてをバラバラにして修理しています。右の半身を分解したところ、その接合面に、舞木氏が2000人あまりを集めてこの仏像を作ったと記された墨書が出てきました。

舞木は群馬県の千代田町に地名が残るこのたりの中世の豪族です。利根川の北側を地盤にして今した。現在ある利根大堰の少し上流になります。

大堰は葛西用水や埼玉用水が始まるところですので、龍蔵寺近くを流れるの会いの川とも繋がっています。そう考えると、何かの事情で舞木氏とこの辺りに関係があり、いつしか龍蔵寺に奉られるようになったのかもしれません。

また、仏像内に入れる木札に書き込むのではなく、継ぎ合わせた後には、基本的に誰も見ることができない接合面に書かれていたのも不思議です。何か事情があったのでしょうが歴史のロマンを感じます。

さて、親鸞聖人のお言葉に

「二種の回向あり 一つには往相 二つには還相なり。」

というのがあります。親鸞聖人のオリジナルではありませんが、浄土真宗と特徴付ける教えとして重視されています。
廻向とは利他の行、すなわち全ての衆生にひたすら利益を与え、悟りに導く行いです。これを慈悲といいます。その廻向も往相と還相の二つに分類できます。
往相とはすなわち、己の功徳をもって、全ての人の往生を願うこと。つまり現世での廻向です。一方、還相とは極楽浄土での修行の後に、この世に戻って人々を救うことです。阿弥陀様の教えは、単に現世を脱しにあの世に往生しようと願うだけではない、修行の完成後には再びこの世に戻って人々を救う、共に生きることができる。親鸞聖人はこのいずれもが、御弥陀様の本願による計らいとして、自力を排し、他力を強調します。

こういった考えが、当時の人々の心を捉え、その後の浄土真宗の発展に繋がったのです。
龍蔵寺のご本尊様も、そういった流れのなかで、人々の願いや祈りを集め、作られたものであることに、思いを寄せたいものです。

合唱 住職