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漢文の素養  誰が日本文化をつくったのか? (加藤 徹著)を読みました。

お経は漢文で書かれていますので、皆さん当然、お坊さんは読めるものと思ってらっしゃるかもしれませんが、事はそう簡単ではありません。お経には訓読点は振られていませんし、かなり難解な単語も頻出します。正直なところ・・・読めません。

では、何を言っているかを理解せずに呪文のように唱えているかというとそうでもなく、修行期間中に書き下し文や現代語訳を読んでいますから、そういう記憶と照らし合わせて、ふむふむと頭の中で再構築しながら読んでいるわけです。

もちろん、読みたい、読めるようになりたいという願望はあるんですよ。そういう願望があるからでしょうか、ついついこういう本を手に取ってしまいます。漢文について書かれた本ではありますが、漢文は有名人が書いた漢文や著名な漢詩が時々出てくる程度で、専ら日本におけ漢文の受容と発展の歴史が書かれた本でしたが、えらく面白い本でした。

面白いのが中臣鎌足と蘇我入鹿のエピソード。鎌足は中大兄皇子と組んで、ライバル蘇我氏の中心人物である入鹿を暗殺し、そこから大化の改新が始まるわけですが、実はこの二人、当時都にあった漢文塾の同級生だったんだそうです。そのことは藤原(中臣)氏の家史である「藤氏家伝」に書いてあるらしいのですが、暗殺した蘇我入鹿を礼儀正しい優秀な男と先生から評価されていたと伝える一方、鎌足はその先生から、更に優秀で神識奇相を供えている、と持ち上げられて書かれています。

いずれにしても、大化の改新前夜に、超重要人物二人が机を並べて勉強していたなんて話は、まったく習った憶えがなく、突然あの時代に親近感がわいてしまいました。もちろんそのことが書かれた文献にもですが。歴史もこういうことをちゃんと教えれば、生徒も楽しんで勉強すると思うのですが。
 

副住職

合掌