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お寺にも墓じまいをしたい、と相談に来られる方がちらほらおられます。跡継ぎがいないという事情が今のところは多いように思います。
今朝の日経新聞で、『「墓じまい」肯定6割』という見出しを見つけ、これはえらいことだと内容を見てみると、質問が「遠く離れた実家のお墓を居住地の近くに改葬などをして整理する「墓じまい」をどう思うか?」という質問で、新聞の見出しは明らかにミスリード。坊さんの感覚でいうと、「墓じまい」は墓でもってご先祖様を供養する、あるいはご先祖様とのつながりの依代とすることを止める、というが「墓じまい」。改葬というのはお墓の引っ越しであって「墓じまい」とは考えません。記事では「墓じまい(実は改葬含む)の肯定6割」と言いつつ、「先祖代々のお墓の継承で困っていること」という問いでは、6割が「特に困っていることはない」との回答で、お寺としては胸をなで下ろす回答となっています。そりゃ「お墓は近くて便利なところの方がいいよね? そのために改葬する必要があれば、それは仕方ないよね?」と聞かれれば、ほとんどの方が「そりゃそうですね」と答えるのではないかと思います。「墓じまい」をビジネスにしたい新聞社の思惑を感じます。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35676400S8A920C1CR0000

ご家族がいない、息子さんや娘さんがいない方が「墓じまい」を考えるのは仕方ないことです。また、墓を身近な所に移動したいと考えるのも自然なことです。一方で自分がどこの出身なのか、あるいはご先祖様が長い時間を過ごした場所、故郷がどこなのかは、現代においても個人のアイデンティティに占める割合は小さくないように思います。小生は香川県の善通寺市に本籍があります。祖父が神戸・大阪に働きに出たっきりですので、すでに縁遠く、僕も善通寺には行ったことがありません。本家と呼ぶ親戚にも慶弔時に会うくらいです。戸籍謄本が必要なときに、いちいち役所に手紙を書かねばならず、本籍を移したら? と言われることもあるのですが、やはりそこがルーツだということを示すためにも残しておきたい、とこだわってしまってそのままにしてあります。ちなみに小生の長兄は結婚した時に戸籍を香川から大阪に移したらしく、そのことを最近聞いてちょっとびっくりしました。それそれの考え方にもよるのでしょう。

話が逸れました。さてお寺でもよく問題になるのが、親は墓じまいをしたい、息子はしたくない。あるいはその逆もあります。お墓が仏壇に代わることもあります。お寺としての基本的なアドバイスは、お墓も仏壇も生きている人の為のものです。自分が必要なら自分の判断としてそうすれば良いし、自分の死んだあとの話であれば、それは娘息子の判断にまかせたらどうですか? というものです。お墓も仏壇も今を良く生きるための小道具に過ぎません。それで家族仲が悪くなっては元も子もありません。

終活については以前にも少し書きました。ご参考にして頂ければ幸いです。

副住職