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新春の候、檀信徒の皆様におかれましては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

お陰様で今年も無事、除夜の鐘を滞りなく撞き終わり、新年を迎えることができました。
昨年は元旦に能登で大地震がおきて大きな被害が出ました。世界を見れば各地で戦争が起こり、自由や安全、豊かさを求めて人々が大移動しています。改めて日本は平和だな~と(新年の馬鹿ばかしいテレビを見ながら)思います。しかし過去を見れば、明治期に日本人は百万人以上が貧困から逃れようと海外に移住し、日清日露、二度の大戦を戦い、国土が焦土となる経験をしました。現在の世界は、日本の過去の姿であり、また未来であるかも知れません。

この歳になってきますと、伝教大師最澄の「一隅を照らす」という言葉にぐっとくるようになってきました。最澄は比叡山延暦寺を開いた天台宗の祖であり、浄土宗の法然上人も諸宗の祖も延暦寺で修行したことから、日本仏教の諸宗の源流といえます。その最澄が最も大切にした言葉がこの「一隅を照らす」という言葉です。

「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」

自分の置かれた場所で精一杯努力し、周囲を明るく照らす人こそが国の宝である、という意味が込められています。

冒頭に大きな事を書きましたが、新年を迎え、多くの方が新たな大きな目標を立てられることでしょう。しかし、大きな変革や華々しい成功だけに価値があるものではありません。最澄の教えは、日々の小さな努力の積み重ね、わずかな、小さな世界、片隅を照らすことしかできない成果であったとしても、それこそが真の価値ある行いであると伝えようとしているのです。

新しい年の始まりに当たり、皆様一人ひとりが「一隅を照らす」存在となられることを心より願います。自分の置かれた場所で精一杯努力し、周囲に光を与える人こそが、真の「国宝」なのです。自分自身もそうなりたいと願います。

今年一年が、皆様にとって実り多き年となりますように。