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アメリカで人種差別抗議への抗議のデモが激しさを増しています。発端となったアフリカ系男性と警官は、もともとガードマンとして同じお店で働いてた同僚だったようで、当時から仲が悪かったという報道もあります。偶発的な人種差別事件というよりは怨恨からの殺人と見るべきかもしれません。

ミネソタ州には高校生の頃半年ほど住んだことがあり思い入れがあります。平和な農村地帯で、基本的にはドイツや北欧からの移民の子孫が多い地域です。アフリカ系は多くありません。ミネアポリスから車で二時間ほど走った田舎でホームステイしていましたが、通った高校にアフリカ系の学生はただ一人しかいませんでした。成績トップで卒業する優秀な女性で、周りからも尊敬されているようでした。ちなみに私はその高校の二人目の日本人で、初めての卒業生ということでした。一人目は冬の雪道で交通事故に遭い亡くなってしまい、その後にやってきのが僕という微妙な状況でした。

ミネソタ州は南北戦争でも北軍で、政治もどちらかというと民主党が強い地域です。ではそういった場所では差別がないかというとそうでもない。南部のアフリカ系差別は接点も多く日常的な小さな差別の積み重ねですが、北部の差別は接点が少ないだけに、陰湿で苛烈だと当時もよく聞かされました。アジア系に対しての「あなたも気をつけなさいよ」という注意と理解していました。

さて、話は変わりますが、仏様がなぜ金色に輝いているかご存じでしょうか。

大般若経や大智度論には、仏になった時に現れる身体的な特徴が三十二相として載っています。その14番目が金色相で、皮膚が金色を帯びて輝いている様子が示されています。

金色に輝くことで、仏様の豊かさ、慈悲深さを表現しているとも言われますが、仏の世界ではみな金色に輝き、肌の色による差別がないことを表現しているという説明に私はより魅力を感じます。

インドも実は他民族国家で、肌の色の薄いアーリア系から濃いタミル系まで、様々な人種が混在しています。加えてカーストによる差別もありますので、それら全てを乗り越えるシンボルとして、金色に輝く仏様がイメージされたのではないかと思います。

ハラリのサピエンス全史にも、生き残るために他集団と殺し合ってきた人類の長い歴史が載っています。見た目や言葉、文化の違いに警戒心を抱くこと、逆に身近な方に親近感をいただく事は、DNAに刻み込まれた生き残る智慧といえるかもしれません。

しかし今は、人種や性別、年齢を越えて、多様性のなかから新しい智慧や価値を生み出していく時代です。そのことに2500年前から注目していたのがお釈迦様です。

お寺にお参りの際、金色の仏様をご覧になられたら、ぜひそのことを思い出して頂きたいと思います。

住職 合掌