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猛暑が続いています。

八月はお盆やお施餓鬼といった行事が続く、お寺としては忙しい季節です。12月を坊さんが走り回る季節ということで師走ともいいますが、今日的坊さんからすると、八月の方がよっぽど師走です。

しかしこう熱いと坊さん側も、またお参りされる方も大変で、もう少し涼しい時期にできないかと考えてしまいます。

餓鬼道に落ちた母親を救おうと願うお盆は、仏教教団(サンガ)の雨期の特別修行期間が明ける7月15日(旧暦の7月は新暦の8月ということで、当山では8月がお盆です)にやるべしと、お経に書いてありますので、この日にやらない訳にはいきません。一方、自分の健康長寿を祈るお施餓鬼の由来となった経典には、いつ供養せよという話は登場しません。一年中、いつやっても構わないのが、お施餓鬼です。

どうしてお盆は日が指定されたのでしょうか?
じつは、お盆の母親の救い方には特徴があります。

雨期の特別修行の最期の日、修行僧は托鉢にも行かずに修行に励んでいましたので、服はボロボロ、お腹はペコペコという状況です。このような日を選んで、お釈迦様は修行僧に食べ物や袈裟を布施をするように教示しています。当然、修行僧は大いによろこびます。

その喜びが回り回って餓鬼や餓鬼道に落ちた母親にも伝わり、母親も救われる。

つまり、お盆の行事は、とても困っている人への施し、つまり他人に施しをする利他の行い、他の人をハッピーにすることが、回り回って自分の母親、そしてそれを喜ぶ自分の幸せにもつながることを教えているのです。この、回り回ってが最も効果的な日として、特別修行期間の最終日が選ばれたという訳です。

一方、お施餓鬼では、餓鬼による3日後に死ぬという予言を回避しようとすると物語です。餓鬼は餓鬼道に落ちたすべての衆生と幾千もの坊さんに食事を布施すれば助かる。と方法を指示します。しかし貧しい修行僧である阿難にはそのような財力はありません。お釈迦様に相談すると、ただ一皿の食事でよい、加持飲食陀羅尼の偈文を唱えながら布施することで、すべての餓鬼と坊さんに食事が行きわたり救われると教えます。

これは五つのパンと二匹の魚で5000人の信者の腹を満たしたという、キリストの「パンと魚の奇跡」によく似ています。到底不可能な事でも、まず誰から率先して行う、皆で行う、Pay Forward することで大きな奇跡、自分の幸せを実現できることを教えています。

こう考えると、機を選ぶ事の大切さを教えるお盆、いつでもできる事を率先せよと教えるお施餓鬼。矛盾するようですが、いずれも大事であることを教えてくれているのだと思います。