12月になりました。年々、時間の経つのが速くなります。
フランスの哲学者ジャネは、年月の早さは年齢の逆数に比例とすると主張しました。これをジャネの法則と呼びます。生まれたばかり、1歳児に取って1年は365日ですが、10歳の時には37日程度と10倍の速さということになります。50歳を過ぎると1年は7日程度。つまり10歳の頃の5倍、20代のころの倍の速さということになります。
このジャネの法則には科学的根拠があるわけではなく、ジャネの主観に過ぎないわけですが、100年以上にわたって参照されているのは、それなりに共感をもって受け入れられているからだろうと思います。
生まれたばかりの頃、子どもの頃は、身の回りの全てが新鮮で刺激的です。一方、大人になってしまうと、ある程度の事は経験済みで、刺激も少なく退屈と感じることも多くなります。ものごとが刺激的だと、時間の経つのも早そうで、退屈だと時間も長くなりそうですが、ジャネの法則では不思議と逆になってしまいます。
仏教においては、瞑想は基本的な修行の一つです。念仏を唱えるのも、瞑想の一形態と言えます。瞑想の基本は観察(かんざつ)です。静かに座っているだけなので、大きな刺激ないのですが、体の節々に生じる痛み、心に沸き起こる雑念、なんでこんなことをやっているんだろうという不安、そういたものを、スケッチを取るように丁寧に観察していきます。英語ではこの観察を、ノートを取るという意味でノーティングという訳を当てています。
この観察はあたかも赤ちゃんが世の中に出てきた時に、周りを知ろうと行っていることと同じように思えます。外へ外へと広がる赤子に意識に対し、内へ内へと向かうのが仏教の観察、瞑想ということになります。瞑想は時間の速度を再び遅くし、充実した時間を取り戻すメソッドでもあるわけです。
歩いているときには歩いていることを観察し
座っているときには座っていることを観察する
立っているのときには立っていることを観察し
歯を磨いているときは歯を磨いていることを
食べているときには食べていることを観察する
瞬間瞬間を観察すると妄想が消える
妄想が消えると智慧が現れる
皆様の年末がよりよいものでありますように。
合掌 住職