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法事や葬儀で、「にんじん」という言葉を耳にすることがあると思います。
オレンジ色の野菜の「人参」ではありません。こちらは「人身」。人に身体と書きます。人間という意味ですが、魂の入れ物としての人の肉体という意味が強いように思います。

法然上人が黒田の聖人。黒田は今の三重県の地名ですが、その正体は不明で、奈良の東大寺を再建した重源ともその弟子の行賢とも言われています。いずれにしても当時活躍していた仲間の僧侶に宛てた手紙で、現在では「一紙小消息(現代語訳はこちら)」と呼ばれています。一枚の短い手紙という意味です。法然上人の教えのエッセンスが詰まったテキストとして、浄土宗では大変重要視されています。

この手紙に、

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受け難き人身を受けて
会い難き本願に会いて
発し難き道心を発して
離れ難き輪廻の里を離れて
生まれ難き浄土に往生せん事
悦びの中の悦びなりと
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

という文面が出てきます。今の言葉でいえば、

長い輪廻の末になかなか得がたい人間うまれ変わることができた。
たとえ人間に生まれ変わったとしても、なかなか巡り会えない佛の教え、阿弥陀様の本願に会うことができた。
また本願を知ったとしても、なかなか発こすことができない仏道を求める心を発こすことができた。
そしてついに、離れがたい輪廻の世界、人間の世界や地獄、餓鬼道を離れ、
ついに生まれがたい極楽浄土に往生できそうだ。
これこそ喜びの中の喜びである。

というような意味になります。

何万回と輪廻を重ね、動物や昆虫への生まれ変わりも繰り返し、恐ろしく低い確率である人間に生まれ変わることができた。その悦びが「受けがたき人参を受け」という言葉に表されているわけです。

そしてこの手紙は、この幸運を阿弥陀様に感謝し、この奇跡を損なわぬよう、念仏を唱え修行に励めと続きます。

毎日当たり前のように人間として目を覚ましますが、人間として生まれた確率の低さ、運の良さ、自認できた時、一日一日の過ごし方も、また変わってくるのではないかと思います。

境内のアジサイも咲き始めました。