名前の字体について

以前京都に行ったとき、祇園の漢字ミュージアムで「フォントのホント展」をやっていました。フォントによる文字の違いや、お年寄りや外国人といった多くの人に読みやすいユニバーサルデザインについてなど、フォントに関する様々な蘊蓄や歴史が紹介されていました。フォント以外にも、漢字には同じ音、同じ意味でも微妙に違う異字体というのもあり、実に奥深いモノだと感心しました。最近話題となった字体では、元号の「令和」の「令」の字で、「刀」と「マ」、どちらが正しいかというのがありました。一般的によく使われる明朝体では「刀」の方の「令」が使われていますが、義務教育で習う方は「マ」の方であったり、同じ漢字でも印刷文字と手書きによって字体が異なっています。フォントによっては異字体に対応していないことがあるので、一般的にどの字体を使用するかが課題になります。

「令」についてはどちらでも良いとなったようですが、自分の名前であればどうでしょうか?「フォントのホント展」の一角に「あなたの「ナベ」の字はどれ?」というアンケートがあり、44種類の「ナベ」(辺、邊、邉、etc…)から選べるようになっていました。普段馴染みのない人にとっては全部同じのような気がしますが、2点のシンニョウであったり、「自」の下の部分がつながっていたり、そもそも「自」ではなく「白」だったり、よく見るとちゃんと違いがあります。役所に登録されている名前では、このような字体の違いがちゃんと区別がされているそうで、重要な手続きでは登録されている字体でないと拒否されることもあるそうです。私の苗字は簡単で良かったとつくづく思いました。

お寺にいますと、役所に登録されていた字体と実際に使用していた字体が違うということに、亡くなってから気がついたという話がよくあります。古いお墓での字体と、役所に登録されている字体とが違う場合もあり、もはやどちらが正しかったのかよく分からないこともあります。最近ではそのようなことのないようにしっかりと確認を行っていますので、以前より名前の字体に関する意識が高くなっているように思います。名前にもいわれがあり、これと決めた字体にも決めた人の思いがあるわけで、そういう家族の歴史を大切にしたいと思う気持ちが強まっているのかも知れません。

戒名を授ける際には、俗名から一字取って戒名に使うことがよくありますが、後になって「役所で登録された正式な字体にして欲しい」あるいは「普段から慣れ親しんでいた字体にして欲しい」と仰る方もおられるので慎重に考えなければなりません。どちらにしなければならないといった決まりはありませんが、後から後悔しないようなにかの折に役所で登録されている自分の字体をきちんと確認されると良いのではないかと思います。

見習い  合掌